DIC(播種性血管内凝固症候群)
(ア) DICは、基礎疾患の存在を背景に、何らかの誘因により血管内でトロンビン生成が起こり、血液凝固系の亢進により細小血管内で微小血栓が形成され、それに伴い、二次的に線溶系の活性化が出現する病態を指す。これらの過程で全身の、主に細小血管内に血栓が多発し、凝固・線溶因子、血小板が消費され、消耗性凝固障害に基づく特徴的な出血傾向を呈する。
DICは、上記のとおり、必ず基礎疾患が存在し、その上に進展する病態であり、特発性のDICと称するものは存在しない。
(イ) DICの基礎疾患は、感染症、ショック、悪性腫瘍、産科的疾患、血管内溶血、組織損傷(大手術後、広範囲の外傷、広範囲の熱傷)、血管病変などに大別されるが、DICを発症する疾患は様々であり、内科・外科・小児科・産婦人科のいずれの領域にも症例は存在する。
このうち、産科領域に関しては、平成15年5月刊行の「産科疾患とDIC(綜合臨牀第52巻第5号)」において、C教授が、DICの基礎疾患として、①常位胎盤早期剥離、②羊水塞栓症、③DIC型後産期出血、④HELLP症候群、⑤妊娠性急性脂肪肝、⑥重症妊娠中毒症・子癇、⑦死児稽留症候群、⑧敗血症性流産、⑨産褥性敗血症、⑩不適合輸血、⑪重症ショック、⑫悪性腫瘍末期を挙げている。
また、昭和55年9月刊行の「産科学入門(第5版)のDICの項では、DICの誘因となる重要な産科疾患として、常位胎盤早期剥離、子宮内死亡胎児の長期残留、羊水塞栓、子宮破裂、流産時の子宮内容除去術、子宮外妊娠中絶、帝王切開術、胎盤用手剥離術、異型血輸血、前置胎盤、手術侵襲、敗血症などが挙げられており、そのうち最も多いものは胎盤早期剥離であるとされている。
(ウ) DICの診断について、症状や検査所見は基礎疾患や病態により異なることもあることから、DICの診断においても、基礎疾患の存在、臨床症状や血液凝固学的検査所見から総合的になされるべきものであり、決して画一的に考えるべきものではないとされている。
昭和55年、旧厚生省の血液凝固異常症調査研究班は、基礎疾患、臨床症状(出血症状、臓器症状)、検査成績(血清FDP、血小板数、血漿フィブリノゲン、プロトロンビン時間)の各項目について重要度に応じた点数を割り振り、合計点数によりDICの可能性を診断する基準(以下「厚生省DICスコア」という。)を作成し、昭和63年に診断のための補助的検査成績を加えた改訂版を作成した。
(平成22年(ワ)第44040号、平成23年(ワ)第910号、同第17717号
各損害賠償請求事件
平成24年(ワ)第5680号 薬害C型肝炎被害者救済請求事件)
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