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自身でアスベスト訴訟を提起するか弁護士に依頼するか

アスベスト訴訟についてインターネットで検索するとたくさんの弁護士事務所が表示されますが、ご自身で訴訟を提起することも可能です。

ここではご自身で訴訟を提起するメリット、弁護士に依頼するメリットについてそれぞれ解説します。

1.アスベスト訴訟の主な流れ

 

アスベスト訴訟を提起するには、和解に必要な証拠書類を収集し、訴状を裁判所に提出し訴訟を提起します。口頭弁論では法廷で準備書面の内容に沿って和解要件を主張・立証をしていきます。賠償金支払いに必要な要件を満たすことが確認されると国との和解手続に移行します。和解が成立した後、国から症状に応じた賠償金を受け取ることができます。

2.アスベスト訴訟の賠償金(和解金)

  裁判上の和解を成立した場合に受け取ることができる賠償金は以下の表のとおりです。

石綿肺(じん肺管理区分の管理2)

550万円(合併症なし)

700万円(合併症あり)


石綿肺(じん肺管理区分の管理3)

800万円(合併症なし)

950万円(合併症あり)


石綿肺(じん肺管理区分の管理4)

1,150万円

肺がん

1,150万円

中皮腫

1,150万円

著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚

1,150万円

上記石綿関連疾病による死亡

1,200~1300万円(疾病・症状に応じて変動)

3.アスベスト訴訟をご自身で提起するメリット

   まず、アスベスト訴訟で国から賠償金を受け取るためには国を相手に訴訟を提起し、和解を成立させる必要があります。弁護士に依頼すると弁護士費用がかかりますが、ご自身で訴訟を提起することにより弁護士費用がかかりません。しかし、どの時点で石綿製品に触れる機会があったのかを特定するのが難しいケースや被害を受けた方がすでにお亡くなりになっている場合、ご遺族は仕事の内容がわからず、病気の原因が仕事にあることを説明できない可能性があります。さらに、賠償金の受給要件を満たすための資料の収集及び調査など、時間や手間がかかります。そのため、医療や法律・裁判に関する専門的な知識をお持ちでないと、途中で頓挫してしまう可能性があります。

4.アスベスト訴訟を弁護士に依頼するメリット

①和解を成立させるための必要な証拠書類収集のアドバイスが受けられる 

   アスベスト訴訟で賠償金を受け取るためには、証拠書類などを提出する必要があります。あらかじめ知識がある方以外はどのような資料を収集したら良いかわからず多くの時間や労力がかかってしまうこともあります。弁護士に依頼をした場合、証拠収集方法などについて適切なアドバイスが受けられます。

②訴訟手続きを代行してもらえる

   ご自身で裁判を提起する場合は訴状等を作成し裁判所に提出する必要があり、平日に裁判所に出向く必要がありますが、弁護士に依頼した場合は訴状等の作成・提出も弁護士が行いますし、基本的に裁判所への出廷も代理してくれますので裁判に費やす時間が軽減されるでしょう。

   また訴訟を弁護士に依頼し、国家賠償金請求で和解が成立すると、弁護士費用として、賠償金の10%が上乗せされます。

 

5.アスベスト訴訟の弁護士費用

  アスベスト訴訟の弁護士費用は弁護士事務所によって異なります。相談料や着手金を無料、完全成功報酬制を採用し、初期費用をかからないよう設定している事務所もあります。成功報酬は支払われた賠償金から10~20%程度で設定している事務所が多いようです。着手金無料・完全成功報酬制を採用している事務所であれば仮にアスベスト訴訟で賠償金が得られない場合でも弁護士費用を支払わなくて済む可能性があります。最近ではホームページ等で費用や相談の流れなどを掲載している事務所が多いので相談前に確認してみるのも良いかもしれません。

6.アスベスト訴訟の弁護士選び

  いくつもある弁護士事務所の中かでどの弁護士に依頼するか迷うことがあると思います。その時に弁護士を選ぶ際のポイントをいくつかご案内します。

①アスベスト訴訟を扱っている事務所

  弁護士によって対応できる分野が異なるため、アスベスト訴訟の依頼を受けていない事務所もあります。ホームページなどで対応している旨確認できない場合は直接お電話などで確認が必要です。

②アスベスト訴訟の経験があるか

アスベスト訴訟は法律の知識だけでなく医学的な知識も必要となります。そのため、アスベスト訴訟の対応経験が多い弁護士に任せる方がスムーズに手続きを進められる可能性が高いです。

③弁護士費用

  弁護士に相談、依頼する際に弁護士費用がかかる場合もあります。完全成功報酬制を採用していても成功報酬の割合なども弁護士によって異なります。ホームページなどで事前に確認したり、無料相談時などに弁護士に費用の詳細について問い合わせするのが良いでしょう。

7.まとめ

 ご自身で訴訟を提起することも可能ですが、医学や法律の専門知識が必要なため時間や手間がかかることでご自身にかなり負担が掛かることもあります。

 アスベスト訴訟に対応できる弁護士に依頼したほうが、専門的な立場からのアドバイスやサポートによりスムーズに手続きが進む可能性があります。

 弁護士費用の持ち出しを心配されている方も弁護士費用は受け取った賠償金から徴収している法律事務所もありますので弁護士選びの参考にしてみてはいかがでしょうか。


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