C型肝炎ウイルス持続感染者の具体的な病態は、主として次のとおりである。
(ア) 無症候性キャリア
無症候性キャリアとは、肝炎ウイルスが持続感染しているが、肝機能検査、特に血清トランスアミナーゼ(AST、ALT)が持続的に正常である者をいう。血清トランスアミナーゼの基準値は、多くの検査施設において、30から40IU/lと設定されている。一般に、C型肝炎ウイルス血症を有し(血清HCV-RNAが陽性)、かつ、1年間以上持続的に血清トランスアミナーゼが正常値(基準値)を維持する者が無症候性キャリアに当たるとされる。無症候性キャリアの多くは一定の肝障害を有しているが、その炎症や線維化の程度はごく軽度である。
(イ) 慢性C型肝炎
慢性C型肝炎は、C型肝炎ウイルスの持続感染により惹起される、持続する肝臓の炎症である。平成8年に日本肝臓学会の犬山シンポジウムで発表された「新犬山分類」によれば、慢性肝炎は、臨床的には、6か月以上の肝機能検査値(AST(GOT)、ALT(GPT))の異常とウイルス感染が持続している病態をいい、組織学的には、門脈域にリンパ球を主体とした細胞浸潤と線維化を認め、肝実質内には種々の程度の肝細胞の変性・壊死所見を認めるものと定義される。
新犬山分類では、組織所見において、線維化と壊死・炎症所見を反映させ、線維化と活動性の各段階に応じた分類を行っており、線維化の程度については、門脈域より線維化が進展し小葉が改築され肝硬変へ進展する過程で、線維化なし(F0)、門脈域の線維性拡大(F1)、線維性架橋形成(F2)、小葉のひずみを伴う線維性架橋形成(F3)までの4段階に区分する。さらに、結節形成傾向が全体に認められる場合には、肝硬変(F4)と分類する。
(ウ) 肝硬変
肝硬変は、肝臓全体に線維化と結節形成が認められる病態であり、臨床的には、非代償性(肝障害が進行し、肝性脳症や黄疸、腹水、低アルブミン、出血傾向などの臨床所見及び症状が出現した病態)と代償性肝硬変(上記臨床所見及び症状が出現しておらず、肝予備能が比較的保たれている病態)とに分けられる。肝不全徴候を認める非代償性肝硬変は特徴ある身体所見と検査成績によって診断が比較的容易であるが、自覚症状が少なく、特異的な診断マーカーもない代償性肝硬変では、慢性肝炎との鑑別が困難な場合があり、病歴、検査成績、画像検査所見などを総合的に評価して診断する。
肝硬変の成因には、ウイルス性肝炎のほか、アルコール性、自己免疫性、胆汁うっ滞型、代謝性、うっ血性、薬物性、特殊な感染症、非アルコール性脂肪肝炎が指摘されているほか、原因不明の症例もあるが、成因によらず、慢性肝障害の終末像として同様の病態を示す。平成11年から同20年までの肝硬変の成因別頻度は、全体の60.2%がC型肝炎である。
(エ) 肝がん(肝細胞癌)
肝がんは、肝細胞由来の上皮性悪性腫瘍である。日本の肝細胞癌の約70%をC型慢性肝炎患者が占める。HCV感染による発がんは線維化のステージと相関しており、最も軽微なF0及びF1では年率0ないし0.5%、F2で1ないし2%、F3で4ないし5%、F4(肝硬変)では約6~7%で発がんすると報告されている。
病初期の肝細胞癌は全くの無症状であるが、随伴する肝硬変の症状としてくも状血管腫、手掌紅斑、黄疸、腹水、肝性脳症などが認められることがある。肝細胞癌により死亡する場合の死因は、癌が肝の大部分を占拠することによる肝不全、癌破裂に伴う大量出血、門脈内腫瘍塞栓による静脈瘤破裂、肺転移による呼吸不全などである。
肝細胞癌の診断は、各種画像検査(腹部超音波検査、CT検査、MRI検査、血管造影検査など)を中心に行われ、腫瘍マーカーが補助的に使用される。
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