以前のコラムでアスベストが「奇跡の鉱物」と呼ばれるほど多様な特徴を持っており、様々な用途に使われてきたことをご紹介しました。今回はそんなアスベストが人体に危険を及ぼす理由について解説します。
アスベストの繊維は髪の毛の5,000分の1程度と極めて細い繊維のため、空気中に飛散しているアスベスト繊維は肉眼で見ることができません。また、アスベスト繊維は丈夫で変化しにくい性質を有しているため、空気中に放出されると消滅することなく長時間空気中を浮遊します。
アスベストの繊維を吸い込んでしまうと、その一部は痰によって体外に排出されます。しかし、排出されなかったアスベスト繊維が肺の内側に刺さり、体内で分解・排出することができずに肺の組織内に長期間残ってしまうことで炎症を起こし、様々な健康被害を引き起こすことがあります。
アスベストによる疾病の主なものとして、肺がん、中皮腫、石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水があります。
一般的に、アスベスト繊維を吸い込んでしまってもすぐに上記に挙げたような疾病が発症するわけではなく、長い潜伏期間(10~50年程度)を経て発症すると言われています。そのためアスベストは「静かな時限爆弾」と呼ばれるようになりました。
現在、アスベストは原則として製造・使用等が禁止されています。しかし古い建物などにはアスベストが使われている可能性があり、解体などの際にはアスベストが飛び散らないよう対策が必要となってきます。
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